2008年4月5日 読売新聞より
三重)長引く桑名市の産廃代執行 かさむ県負担
期間終了後も1億円 国の支援は見込み立たず
アスファルトで覆われた不法投棄現場。奥の建物が浄化施設 三重県が桑名市五反田の産廃不法投棄現場で行っている行政代執行が、3月末で計画期間を終えた。
費用は計14億7000万円で、すでに当初計画をやや上回っているが、2009年度も汚染源を確認するため、当初予算に環境復旧事業費として約1億300万円の計上を余儀なくされた。相次ぐ追加負担に、「見通しが甘かったのではないか」と批判の声が上がっている。(小林正道)
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アスファルトで覆われた不法投棄の現場。奥の建物が浄化施設 |
さらなる追加負担も
この現場では、東員町の元産廃処理会社「七和工業」が1995〜96年、山林約3000平方メートルに、ジクロロメタンなど高濃度の発がん性物質を含む汚泥など約3万立方メートルを投棄。しみ出した汚水が近くの嘉例川に流出し、問題となった。県は2001年、国の支援を受けて代執行に着手。投棄された産廃を深さ約20メートルの遮水壁で囲い、地下水をくみ上げて水処理施設で浄化してきた。
しかし、高濃度の汚染区域が残ったため、昨年11月、急きょ約1億5000万円をかけて追加工事を実施。直径4メートル、深さ10メートル以上の揚水井戸を3か所で掘り、高濃度の有害廃棄物を撤去するなど浄化を進めた。
当初計画では、掘削により有毒ガス発生の恐れがあり、民家に近接していて大掛かりな撤去作業が難しく、産廃を現場に封じ込める方法を選択した。国の産廃適正処理推進特別対策事業などの支援を受けたものの、県の負担は約9億円に上る見通しだ。追加工事も国の支援があったが、当初計画にない産廃の撤去、処理の費用など約7000万円が県の負担となった。
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県の見通しに甘さ
今年度、県は浄化処理を停止するが、引き続き地下水の汚染濃度を調査する必要がある。浄化装置の微生物を生かしておくためメンテナンスなども継続しなければならず、装置の稼働時とほぼ同額の費用がかかるという。
これらの事業については、国の支援が受けられる見込みは立っていない。また、新たな汚染源が見つかれば、県の負担がさらに膨らむ事態も考えられる。一方、七和工業から徴収できた金額は280万円にすぎない。
追加負担について、県環境森林部廃棄物適正処理室では「汚染物質をすべて撤去するには膨大な費用がかかり、現場での封じ込めを選んだ。処理に実際に着手しなければわからないことが多かった」と釈明する。
地元の嘉例川自治会の伊藤直枝会長(69)は「汚染物質が、上水道取水口の上流に位置する現場に残された状況は変わらない」と、不安を口にする。フェロシルトなどの産廃問題を追及してきた愛知県愛西市の吉川三津子市議(53)は「次々に税金を投入しなければならない事態は問題だ。
国に計画を提出した時点で十分調査しているはず。見通しが甘かったと言える。高濃度の汚染物質が投棄されており、最初から撤去がすべきだった」と指摘している。
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行政代執行
当事者が法律上の義務を履行せず、放置すると著しく公益を損なうと認められる場合、行政機関が代わって義務を実行できる制度。費用は当事者から徴収できる。
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(2008年4月5日 読売新聞)
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